
売れる色の法則:大ヒット商品パッケージに隠された色彩心理学

スーパーやコンビニの飲料コーナー(棚)において、顧客がその商品を手に取るかどうかの判断は、わずか「0.2秒」で決まると言われています。この一瞬の勝負(シェルフインパクト)を制するために、企業はパッケージやロゴの「色」に莫大なマーケティング予算を投じています。
清涼飲料水の中でも、幅広い世代に絶大な人気を誇るコーラ。今日はそんなコーラのパッケージと「売れる色」の法則についての話題です。
1. コーラ飲料における「赤と青」のカラー戦略
「コーラ」と言って誰もが真っ先に思い浮かべる2大巨頭。そう、「コカ・コーラ」と「ペプシコーラ」です。その缶やペットボトルのロゴデザインには、心理学的に見て「非常に強力で、よく売れる色」が戦略的に使われています。
コカ・コーラは、鮮烈な「赤地」に流れるような「白い文字(リボン・タイポグラフィ)」。
対するペプシコーラは、赤と白もアクセントとして使いつつ、赤とは正反対の「青(ブルー)」をメインカラーに据えています。
でも、少し冷静に考えてみてください。商品の特徴を色に託すという一般的なパッケージデザインの発想から考えると、茶色くて甘い炭酸飲料に対して、強烈な「赤」や「青」をメインに持ってくることは本来考えにくいアプローチです。
コーラの美味しさの特徴といえば、あのスパイスが効いた特有の味(何色で表せばよいか分からない複雑な味)と、炭酸の刺激によるクールな爽快感です。
強烈な刺激=赤、クールな爽快感=青ということもうなずけなくはありませんが、そのロジックであれば、炭酸の弾ける爽やかさを思わせるグリーン系やシルバー系でも良かったはずです。また、ペプシのデザインも赤を使わずに青と白だけにすることも可能だったはずです。
2. 二大陣営が市場を支配する「赤vs青」の法則
誕生当時のデザイン時に、現代のような緻密な「売れる色の分析」をどこまで行っていたかは分かりません。しかし、他の清涼飲料水とは明らかに桁の違う世界的ヒットを長年飛ばし続けているという結果から見て、味の良さはもちろんのこと、使用した「色による強力なブランディング効果」があったことは疑いようのない事実です。
「情熱」「活動的」「食欲増進」を促すエネルギーの塊である『赤』。
「冷静」「知性」「クールな爽快感」を体現する『青』。
色そのものの持つエネルギーだけでなく、そこから連想されるイメージも完全に対照的なこの2色は、全ての色の中で売上を牽引するための代表的な「二大陣営」です。絶対王者のコカ・コーラが「赤」を占有している市場に対し、チャレンジャーであるペプシコーラはあえて正反対の「青」をぶつけることで、消費者の心の中に「あなたはどちら派か?」という明確な対立構造(コントラスト)を作り出すことに成功したのです。
ちなみに、マーケティングの法則として、ある業界で「赤」と「青」のポジションをトップ企業2社に同時に取られてしまうと、3番手以降のその他の商品はまず追従できないといわれています。
それ以降に発売する商品が、赤・青以外の色でインパクトを出そうとしても、この原色2つのパワーの前では、消費者の目を引くことが極めて困難になるのです。例えば、発泡酒や缶コーヒーなどの激戦ジャンルで、トップシェアの赤や青以外の色の商品を出したとしても、店頭で並べたときの視覚的なインパクト(強さ)においてどうしても見劣りしてしまいます。先に赤・青を使用してポジションを確立したブランドが、断然有利というわけです。
3. ゼロカロリー市場を開拓した「黒」の心理的転換
さらに近年、飲料市場で大きな売上シェアを占めているのが「ゼロカロリー商品」や「無糖商品」です。コカ・コーラ、ペプシコーラもそれぞれゼロカロリーを謳い文句にした看板商品を発売していますが、こちらはそれぞれ、ベースカラーに「黒(ブラック)」を用いたデザインになっています。
実はこの「黒」も、現代のマーケティングにおける代表的な「売れる色」です。
本来、食品パッケージにおいて「黒」は、苦味や重さ、あるいは「高級感」を連想させるため、清涼飲料水には不向きとされていました。
しかし、各社はこの黒のイメージを逆手に取り、「余計なもの(糖分やカロリー)を極限まで削ぎ落としたソリッドな機能性」や「大人のためのスタイリッシュな飲み物」という新しい意味づけ(リブランディング)を行いました。これにより、「黒=ゼロカロリー・糖質オフ」という新たな市場のルール(色の共通認識)を作り上げることに成功したのです。
自社の商品パッケージやロゴのメインカラーを決める際は、こうした「色が持つ市場でのポジション」を深く考察することが非常に重要です。

日本列島別のカラーテイスト:風土が育む「色彩感覚」の秘密
色が持つ心理効果は世界共通の部分も多いですが、一方で、店頭に並べる品揃えや地域密着型の店舗デザイン(看板・ロゴ)を考えるとき、強く考慮しなければならないのが「地方・地域別のカラーテイスト(好まれる色)」です。
実は、住む場所(緯度や気候)によって、人々の無意識の「色の好み」はかなり違ってきます。
4. 太陽光の「色温度」と「湿度」が色彩感覚を変える
人間が見られる「色」とは、太陽から降り注ぐ光(紫外線から赤外線までの間の、実際に目で見て確認できる波長の光=可視光線)が物体に反射したものです。
この地球上に降り注ぐ太陽光線は、地域によって青みを帯びていたり、赤みを帯びていたりします(これを色温度と呼びます)。
このような特定の光線環境の中で長年暮らしていると、おのずとその系統に関しての網膜の識別能力が発達し、その土地特有の「自分テイストの色(心地よいと感じる色)」が形成されていきます。
更に、こうした太陽光の条件下に加えて、日本特有の「湿度」が大きな影響を与えます。湿度が高く空気に水分が多く含まれる地域では、光が乱反射して「くすんだ地味な色調(中間色)」に傾きやすく、逆に空気が乾燥して澄んでいる地域では、コントラストの強い「鮮やかで澄んだ色調(原色)」に傾く傾向があります。
5. 北から南へ。日本地図を彩る「好みの色」のグラデーション
また、日照時間や冬の長さの違いは、人々が求める「色の明るさ・暖かさ」にもダイレクトに影響を与えます。生まれた時からこうした気候風土の差にさらされていると、次のような地域別の「色の好みの違い」が顕著に出てきます。
- 北海道:【青系(クリアブルー)】 空気が乾燥して澄んでおり、雪の白と空の青が美しく映える環境から、鮮やかでクリアな寒色系が好まれます。
- 東 北:【青をやや渋くした藍色】 厳しい冬と湿度のある気候から、落ち着きのある渋い色調や、伝統的な藍色・グレー系が馴染みます。
- 関 東:【緑(グリーン)】 都市部と自然が混在する関東では、バランスや中庸を重んじ、スマートで洗練された緑やアースカラーが好まれる傾向があります。
- 中 部:【黄(黄金・イエロー)】 日照時間が長く、昔から商業が栄えた地域性もあり、豊かさや活力を象徴する華やかな黄金色や黄色が好まれます。
- 近 畿:【オレンジ(橙色)】 人情味やコミュニケーションを重んじる文化から、暖かみがあり活気にあふれたオレンジや、派手な暖色系が圧倒的に好まれます。
- 中 国:【ベージュや茶(ブラウン)】 穏やかな瀬戸内海の気候風土のもと、自然と調和するナチュラルなベージュや茶色が生活に馴染みます。
- 九州・沖縄:【赤やオレンジ(原色系)】 南国の強烈な太陽光線(色温度が低い光)に負けないよう、コントラストの強いビビッドな赤やオレンジなどの強い原色が好まれます。
日本列島を想像していただくと分かりますが、日本地図を先ほどの地方別の好みの色で塗りつぶしていくと、北の「青系」から、南の「赤系」へ向かって、まるで虹(スペクトル)のように見事なグラデーションの配色となります。気候と色彩の密接な関係は、非常に興味深く面白い事実です。
6. 全国展開と地域密着。ビジネスにおけるカラーバランス
とはいえ、現代ではインターネットやメディアの発達により、全国的に見てベーシックな色(黒、白、ネイビーなど)の好みはあまり変わりません。
アパレルブランドの服のラインナップや、全国展開するチェーン店の品揃えで考えるなら、「半分~7割は日本全国共通の流行&定番色(無難な色)を取り入れたもの」をベースにしつつ、「残る半分~3割は、その出店地域の特性(カラーテイスト)が出た色のものを品揃えする」というローカライズの手法を取ると、売上の最大化に繋がります。
これは、地域の店舗のロゴマークや看板を作成する際にも非常に役立つ知識です。
ロゴエキスパートでは、ただ綺麗なロゴを作るだけでなく、こうした色彩心理学や地域別のカラーマーケティングの理論を踏まえ、お客様のビジネスがその土地で最も愛され、売上に直結する戦略的なロゴデザインをご提案しております。自社のパッケージカラーやロゴの配色にお悩みの際は、ぜひ専門家であるロゴエキスパートにご相談ください。









